令和5年度 入学式

 令和5年4月11日、井原高校体育館にて、入学式が挙行されました。

 普通科96名、地域生活科44名計140名の新入生が、井原高校の1年生として新しくスタートを切ることになります。新入生代表宣誓では、掛谷知世さん(高屋中出身)が「一人ひとりが心に描く夢をかなえるため、学習面・人間面で大きく成長していけるように努力していきたい」と力強く述べてくれました。

【校長式辞】

 校庭の桜にも若葉が芽吹き、すがすがしい春の息吹を感じさせるこの佳き日に、新入生並びに保護者の皆様方をお迎えして、令和五年度岡山県立井原高等学校入学式を挙行できますことに、本校を代表し、厚くお礼申し上げます。
 ただ今入学を許可された百四十名の新入生の皆さん、御入学おめでとうございます。皆さんは、九年間の義務教育を終え、高校入試を経て、ただ今を以て今年創立百二十周年を迎える歴史ある本校の生徒となりました。皆さんの入学を在校生教職員一同、心から歓迎します。
 こうして皆さんを見ていると、学習はもとより部活動やボランティア活動などに精一杯取り組んで自らを成長させよう、自分らしい生き方を見つけようと決意している様子が伝わってきます。この井原高校を舞台にして、ぜひその決意を実現してください。
 高等学校は、小学校や中学校と大きく違うことがあります。それは、定められた単位数を履修し、修得してはじめて卒業が認められるということです。三年間主体的に学び、頑張りとおすことが必要です。また、民法の改正によって、昨年四月からは十八歳以上が成人として扱われることとなりました。そのためには、高校三年間で、ひとりの「大人」として、社会で自律して生きていく力を身につけることが求められます。今日を出発点として、地道に努力を重ねることが皆さんの責務であることを、忘れないようにしてください。
 さて、野球の世界大会WBCでは日本代表チームが見事優勝を果たしました。投打の二刀流で活躍した大谷翔平選手をはじめとするレギュラー選手だけでなく、出場機会に恵まれなかった選手も一丸となり、チームとして世界の強豪に挑み勝利を得た姿に感動した人も多かったのではないかと思います。私も連日テレビで観戦するなかで、ふと気になったコマーシャルがありました。そのCMでは、大谷選手がプロ入り以降で打たれたヒットやホームランの数、チャンスに凡退した回数など、彼が失敗したことを上げ、それでも二刀流を諦めたことは一度もなかったので、同一シーズンで投手として十勝、打者として三十本塁打を達成できたという内容で、最後に「失敗の数だけ、僕たちは成長できる。」という言葉で締めくくられるものでした。この「失敗の数だけ、僕たちは成長できる。」という言葉は、高校とは皆さんにとってどのような場所であるかということに通じると思います。「高校は、失敗をしても、挑戦し続け、成長するための場」です。
 失敗は成長のチャンスです。なぜなら、なぜ上手くいかなかったかを考える「振り返り」の機会を得ることができるからです。失敗の原因を振り返り、新しい方法でもう一度挑戦してみる。そのサイクルを続けて最後に成功すれば、一度も失敗しなかった人にはない、たくさんの成長の機会を得ることになるからです。
 井原高校をそうした場とするために、皆さんにお願いがあります。みんなが安心して失敗できるように、本校を、皆さんの教室を、安心で安全な場にするように心がけてほしいということです。もう少し具体的にいうと、クラスメイトの失敗を笑わないでほしい、失敗した人を傷つけないでほしい、クラスメイトの挑戦をみんなで支えてほしい、ということです。WBCでもチャンスになかなか打てなかった村上宗隆選手をチームメイトや監督、コーチは、信じて励まし続け、村上選手自身も挑戦し続けて、決勝戦では素晴らしい活躍をしました。こうした姿を鑑として、ぜひ、「失敗をしても、挑戦し続けて成長するための場」づくりに協力してください。
 三年に及ぶコロナ禍で諸先輩方がこれまで積み上げてきた学校の文化が揺らぎつつある中で、南北両校地の統合が完了した最初の学年が皆さんです。いろいろなチャンスを捉えて、積極的にチャレンジしてください。井原高校の新しい学校文化づくりにともに取り組んでいきましょう。
 保護者の皆様におかれましては、お子様の入学おめでとうございます。井原高校の教職員を代表して、これまでのご苦労に対し、感謝と敬意を表し、心からお祝い申し上げます。保護者の方にお願いしたいことがございます。
 高校時代は成長と発達の変化が極めて激しい疾風怒濤の時期であり、また、自立を目指す時期でもあります。お子様との適切な距離感を保っていただき、お子様の歩まれる姿をしっかり見つめ、温かく励まし、時には、毅然とした態度で御指導をお願いしたいと思います。お子様の成長と豊かな個性の育成のためには、学校と家庭がそれぞれの役割を果たしながらも、相互に補完し合い、連携を密にしていくことが重要と存じます。何卒、よろしくお願いいたします。
 最後に、入学生の皆さん、順風満帆な日々ばかりではないかもしれませんが、皆さんが井原高校の空気を胸一杯に吸って、青春の情熱を燃焼させ、逞しく、そして、心豊かに成長してくれることを心から期待し、式辞といたします。

 令和五年四月十一日  岡山県立井原高等学校 校長 上野修嗣